ティツィアーノ
Titian (Tiziano Vecellio) ( 1488-1567)
イタリア   ルネサンス、ヴェネツィア派

荊冠のキリスト
c. 1542

Oil on canvas, 303 x 180 cm

ルーブル美術館
晩年1570頃


canvas, 280x182cm

ミュンヘン、アルテ・ピナコテーク
レオナルドのスフマート技術は、人間が描く筆のタッチをいかに消すか、という技術である。ルネサンスの頂点でもある。しかし、何でもそうであるが、頂点に達すると、そこから新たに逆の方向へ向かおうとする傾向が現れる。

スフマートの逆、それは筆のタッチを残し、人間が描いた痕跡を残すことである。そのほうが人間の心理を如実に表現しうることがある。

絵画史で非常に重要な筆のタッチの典型をティツィアーノに見ることができる。

1540年頃に描かれた『荊冠のキリスト』と同じ主題、構図で、1570年頃に描かれたものがある。

1540年のものは、滑らかに描かれている。しかし、1570年の作品は、筆の振るえるようなタッチで描かれている。

比べると、後者のほうが、人間の心理を如実に表していることが分かる。キリストが耐えている様子が痛いほど伝わってくるのは後者のほうであろう。


参考文献:『絵画の読み方』 西岡文彦著 洋泉社

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