ターナー
Joseph Mallord William Turner (1775−1851)
イギリス   ロマン主義  

モートレイク Mortlake Terrace 、1826
Tu02.jpg (42443 バイト) National Gallery of Art at Washington D. C.
”Mortlake Terrace” にはなにもドラマがない。ただ静かな夏の夕暮れを描いている。テムズ川は静かに流れている。

遊覧船が漂っている。背の高い木々が軽い風にそよいで、長くなった影を芝生の上に落としている。二人ほどの人影。犬が欄干に飛び乗っている。

劇的な効果は何も無い。なのに何かが心を打つ。こんなにも寂しい絵が、かつてあったろうか、と思う。

ターナーが夢中になっていたのは光の効果であろうか。すべては彼が光を描くために存在しているようで、そのために、なにもかも置き去りにされているようで寂しいのである。

木の影は長く伸びているのに、犬の影も、人の影も、欄干の影に隠れている。影を失った生き物は、存在しないのと同じである。

戻る

ホームページ | 西洋絵画 | 女流画家 | 聖書の物語 | ギリシャ神話  | 文学