ルーベンス
Peter Paul Rubens ( 1577-1640)
フランドル  バロック

キリスト降架 The Descent from the Cross
rub02.jpg (56149 バイト) 1611-14
Oil on panel (Central panel of triptych altarpiece) 420 x 310 cm
アントウェルペン大聖堂 Cathedral, Antwerp

アントワープの大聖堂にあるこの大きな降下は、全体を走る右上から左下への線が美しい。唯一、動きの無いキリストの肉体にすべての光を当て、「死」というものを照らし出している。

悲嘆に暮れながらも、人々は作業をしなくてはならない。ここでは、泣き崩れるマリアもいない。

人が亡くなったとき、周りの人間は葬式などの準備に忙しい。悲しんでいる時間は、そうした作業でかき消されるのである。悲しんでいる暇などない、この作業時間が人間に「死」というものへの適応力を与えるのかもしれない。悲しみは永続するが、生き続ける人間にとって大切なのは、その悲しみを受け入れて生きていく力である。

キリストの肉体を降下させる作業には、そういった生き続ける周囲の人々の力が描かれている。だからエネルギーにあふれている作品となっているのではないだろうか。

ドラマティックな光の扱い、人間味のあるリアリズムはカラヴァッジョの影響が大きい。

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