ニコラ・プッサン
( 1594-1665)
フランス   古典主義 、バロック

人生の踊り
1638

Oil on canvas,   82,5 x 104 cm

Wallace Collection, London


『人生の踊り』は人間の運命、時について描いた絵である。

「貧困」 「勤勉」 「富」 「喜び」 たちのダンスである。それを見守るのはアポロと従者たちである。

踊りの輪の左側、青のドレスを着ているのは「喜び」である。バラの冠をかぶっている。贅沢、享楽主義、怠惰を擬人化している。

「喜び」と手をつないでいるのは「富」である。真珠を髪に付けている。「喜び」と「富」はサンダルを履いている。

右側の背を向けた女性像は「貧困」である。「貧困」は「富」に手を出して、つなごうとしているが、「富」は迷っているふうでもある。

背中を向け、月桂樹の冠をかぶっているのは「勤勉」である。この冠は美徳と勝利の永遠の象徴である。「勤勉」が振り返って見ているのは「富」である。

左端にある石柱には、二つの顔がある。古代ローマ神ヤヌスである。「始まり」の神である。ルネサンス以降、「時」の寓意で描かれ、若者は未来を表し、老人は過去を表している。

ヤヌスの石柱に掛かっている花輪は「うつろい」を表す。ヤヌスが「永遠」を表すのと対照させている。

石柱の下シャポンを吹く子供がいる。シャボン玉はヴァニタス(人生のはかなさ)の象徴である。古代ローマの文人ウァロの言葉「ホモ・ブラ」(人生は泡沫の如し)からきている。

右端にいる翼を持っている老人は「時の翁」である。死の使いでもある。すべての人間に存在する。

「時の翁」の手前にいる子供は砂時計を持っている。砂時計もヴァニタス(人生のはかなさ)の象徴である。砂はまだ上半分に十分に残っている。

上部に目を向けると、アポロが凱旋車で空駆けている。永遠を表す輪を支えている。

アポロの凱旋車を、花をまきながら案内しているのは、アポロの妹、暁の女神アウロラである。夜の雲が払われ、夜明けがやってくる。

アポロの凱旋車の後ろを踊りながらついてくるのは、暁の女神アウロラの侍女ホライたちである。彼女たちは「時」の象徴である。

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