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ラファエロ・サンティ
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Raphael,Santi (1483-1520)
イタリア  盛期ルネサンス  

イタリア中部のウルビーノ生まれ。21歳でフィレンツェに来た。そのとき、ミケランジェロは29歳、ダ・ヴィンチは52歳であった。二人の複雑な天才の後を追うかのごとく現れたのがラファエロであった。しかし、彼にはそれほどの複雑さはない。

師となったピエトロ・ペルジーノの才能をすべて吸収する天性を持っていた。フィレンツェに来てからも、ミケランジェロとダ・ヴィンチから、学び取って成長していった。

悲劇的なのは、37歳で熱病に没したことである。

≪チッタ・ディ・カステッロの祭壇画≫
キリストの磔刑と2天使、聖母、聖ヒエロニムス、マグダラのマリア、福音書書記者聖ヨハネ
1502-03  Oil on wood, 281 x 165 cm  ロンドン・ナショナル・ギャラリー

≪オッディの祭壇画≫
聖母の戴冠
1503  Oil on canvas (transferred from panel) 267 x 163 cm ヴァティカン宮美術館 ローマ

聖母の婚礼     
1504 Oil on panel  170 x 118 cm   ミラノ ブレラ美術館
マリアの指にエンゲージ・リングをはめようとしているのがヨセフ。中央に立ち会っているのは司教。

新郎・新婦の友人はそれぞれ5人。
ヨセフの前方で杖を折っている者は、マリアとの結婚を断念した友人。

ヨセフから数えて4人目、顔がこちらに向いている人物はラファエロだという説がある。

背景のブラマンテ風建物の正面入り口、アーチの上方には「ウルビーノのラファエロ」を描かれている。その下に「1504年」ともある。

ラファエロ21歳の作品。
主題解説:聖書の物語 「マリアの結婚(杖の奇跡)」へいく

マリアが12歳になった時、大司祭の前に天使が現れた。マリアの夫を杖の奇跡で選ぶように告げた。マリアと結婚を望む男性たちが、杖を持って神殿に集まった。

求婚者達は、杖を祭壇に奉納して、マリアの夫になるように祈る。

ヨセフの杖にだけ、花が咲いた。これが天使が告げた、杖の奇跡である。鳩が飛び交う場合もある。(ジョットは両方描いている)
マリアはヨセフと結婚する。

コネスタービレの聖母
1504  油彩、画布, 直径 17.9 cm  エルミタージュ美術館  サンクト・ペテルブルク  ロシア
   

スキピオの夢
1504 Oil on wood  17 x 17 cm  ロンドン・ナショナル・ギャラリー
キケロの「スキピオの夢」

小スキピオの見た夢について書いている。夢の中で祖父の大スキピオが現れた。地上で偉大な功績を残した者が天上ではどのような地位に着くか示した。

ルネサンスの人文主義者たちは、官能的快楽も、活動的生活、瞑想的生活も神々からの贈り物で、調和のとれた人格には、どれもが必要と考えた。

ラファエロの作品では、中央、月桂樹の木の下に眠っている甲冑を付けた戦士が「小スキピオ」。

左に質素な服を着て、剣と書物を持っている女性がいる。剣は力、書物は知識の象徴。「文武」という美徳を表している。

右側の女性は服装も髪型も魅力的で、好ましくはない官能的快楽の擬人像である。手にはギンバイカの花を持ち、差し出している。戦う兵士に差し出されるギンバイカの花は「ウェヌス(ヴィーナス)の象徴である。

月桂樹の木の左側の背景は、堅固な岩山で、右側はなだらかが心地良い風景になっている。これも2人の女性の擬人像に合うように描かれている。

指導者として男は快楽の誘惑に負けてはならない。武術と学問に励みなさい、という教訓的な絵。

三美神      
1504-05  Oil on panel, 17 x 17 cm  コンデ美術館  シャンティイ  
主題解説:ギリシャ神話 「三美神」へ行く

カリテスともいう。美、雅、芸術的な霊感、そしておそらく、古代においては豊穣の女神でもあった。

ゼウスとエウリュノメの間に生まれた三人姉妹で、エウプロシュネ(歓喜・祝祭)、タレイア(花のさかり・喜び)、アグライア(光輝)と呼ばれ、喜びと平和を人々に広めた。

彼女らはまた、「愛欲」、「純潔」、「美」を表すとも考えられた。

左端が官能的な「愛欲」の化身、中央は「純潔」、右端が「美」の化身であるという。

「愛欲」と「純潔」は対立する、相反する性質を持っているが、「美」によって和解させられ、統一させられる。

我々の内面には、この「愛欲」「純潔」「愛」があり、それぞれバランスをとりながら生きているのである。

三美神がいつも三人で描かれるのも、こういう訳があるのである。

三美神はたいてい、裸体で描かれ、互いに抱き合っている。アポロ、アテナ、アプロディテ(ヴィーナス)、エロス(キューピッド)、ディオニュソス(バッコス)などどともに描かれる。

玉座の聖母子と5聖人 (コロンナの祭壇画)
1504-05  Tempera, oil, and gold on wood  169.9 x 172.4 cm  メトロポリタン美術館、ニューヨーク

聖ゲオルギウスと竜
1504-06 Oil on wood  28.5 x 21.5 cm ワシントン・ナショナル・ギャラリー
聖ゲオルギウス:伝説上の戦士聖人、殉教者。カッパドキア生まれ。3世紀頃パレスティナのリッダで死んだといわれている。

ヴェネツィアなどヨーロッパでは、いくつかの都市で守護聖人になっている。1222年にはイングランドの守護聖人になり、14世紀頃にはガーター騎士団の守護聖人にもなっている。


竜は「悪」や「異教」を象徴している。異教徒の国がキリスト教に改宗したときに、槍によって竜を殺すという象徴が使われた。

この絵は、信仰によってカッパドキアを征服したことを表している。カッパドキアは一人の女性によって擬人化されている。


聖ゲオルギウスと竜
1505  Oil on wood 30 x 26 cm  ルーヴル美術館 パリ

大天使ミカエルと竜
1505 Oil on wood  31 x 27 cm  ルーヴル美術館 パリ
大天使ミカエル:ユダヤ民族の守護天使。キリスト教により「戦う教会」の聖人とされた。

「ヨハネの黙示録」で「さて、天では戦いが起こった」ミカエルたちが竜と戦った。竜は悪魔とかサタンと呼ばれ、全世界を惑わす蛇は地に投げ落とされた、と書かれている。

教会はこれをキリスト対反キリストという、闘争として説明し、聖ミカエルは悪魔の征服として表わされた。


聖ゲオルギウスは翼がないが、大天使ミカエルは翼がある。

本を読む玉座の聖母子と2聖人 (アンシディの祭壇画)
1505 Oil on panel 209 x 148 cm  ロンドン・ナショナル・ギャラリー

大公の聖母
1505 Oil on wood  84 x 55 cm  ピッティ美術館 フィレンツェ  イタリア

カウパーの小聖母子
1505  Oil on wood 59.5 x 44 cm  ワシントン・ナショナル・ギャラリー

ベルヴェデーレの聖母(牧場の聖母)
1506  Oil on wood  113 x 88 cm  ウィーン美術史美術館  オーストリア

美しき女庭師(聖母子と幼児聖ヨハネ)
1507 Oil on panel 122 x 80 cm   ルーヴル美術館  パリ

カルデリーノ(ゴシキヒワ)の聖母
1507  Oil on wood  107 x 77 cm  ウフィツィ美術館  フィレンツェ イタリア

カニジャーニの聖家族
1507  Oil on wood, 131 x 107 cm  アルテ・ピナコテーク  ミュンヘン ドイツ

子羊のいる聖家族
1507 Oil on wood  29 x 21 cm  プラド美術館  マドリード スペイン

カウパーの大聖母
1508 Oil on wood  81 x 57 cm  ワシントン・ナショナル・ギャラリー

テンピの聖母
1508  Oil on wood, 75 x 51 cm  アルテ・ピナコテーク  ミュンヘン ドイツ

聖カタリナ(アレクサンドリアの)   
1508 Oil on panel  71 x 56 cm  ロンドン・ナショナル・ギャラリー
主題解説:聖書の物語

◇聖カタリナ(アレクサンドリアの) 

キリスト教の聖女(その実在は疑わしいとして教会暦から除外)。

4世紀、アレクサンドリアの貴族の娘で、4世紀初頭ローマ皇帝マクセンティウス(在位306-312)の求婚を退け、その怒りにふれ、処刑されたと伝えられる。

大釘を打ち付けた車輪で拷問を受けるが、その車輪は雷で粉々になったという。最後に斬首されて殉教。

持ち物は拷問の際の車輪のほか、剣、指輪など。


◇聖カタリナの神秘の結婚

ローマ皇帝の求婚を退けた理由はこうである。
キリスト教に改宗したカタリナは聖母子の幻影を見、幼児キリストから結婚の指輪を与えられる。彼女とキリストとの精神的な絆を示す場面として、ルネサンス以降多く描かれた。

聖カタリナは若い女の子、学生、聖職者、車大工、壊れた車輪の守護聖人である。結婚の天使が彼女の周りを取り巻いている。


≪ヴァチカン宮≫ 署名の間
ラファエロは、法王ユリウス2世より、天井の寓意画に対応するように、4周の壁面に歴史的な物語を描くよう命を受けた。

「神学」と「哲学」は真理。「正義」は善。「詩」は美にかかわっている。

これは当時イタリアの新プラトン主義の影響で、人間精神の根本をなす真・善・美の三理念を形象化するものである。

また要請は、当時、ローマ教会は、ギリシア的理想とキリスト教的精神との普遍的な調和を目ざしていたので、それにふさわしい表現である必要があった。

(側壁)
聖体の論議 
1509-10  818 x 588 cm
「神学」に対応する。

上部の雲の上は栄光を表し、地上には聖体の秘跡について論議する信仰者たちが描かれている。

上部の中央のアーチ(祭室コンカ)の上には父なる神が表わされ、そのアーチの中にキリスト、左がマリア、右は洗礼者ヨハネ。

三人の足元には神秘のハトと福音書を見せる四小童。

左右には旧約の族長、予言者、新約の使徒その他が座っている。
左から、聖ペテロ、アダム、福音書記者ヨハネ、ダヴィデ、聖ステファヌス、予言者エレミア、マカベオのユダ、聖ラウレンティウス、モーゼ、聖マタイ、アブラハム、聖パウロ。

地上:聖祭壇を中心に法王、司教、神学者たちが描かれている。聖祭壇は救世主の聖体の象徴。

左端頭部がフラ・アンジェリコ、本を見せているのは建築家ブラマンテ。祭壇を指さしている青年はユリウス2世の甥フランチェスコ・マリア・デラ・ロヴェーレ。聖祭壇の近くで足元に書物を置いているのはユリウス2世。

右側、中央右寄りには詩人ダンテ。

ラファエロはわずか26歳であった。
教会の勝利を象徴する歴史上の人物を、風貌、動作まで描き上げた。驚異的と言っていいと思う。
聖ペテロ、アダム、福音書記者ヨハネ、ダヴィデ、聖ステファヌス
予言者エレミア、マカベオのユダ、聖ラウレンティウス、モーゼ、聖マタイ、アブラハム、聖パウロ
左端頭部がフラ・アンジェリコ、本を見せているのは建築家ブラマンテ。祭壇を指さしている青年はユリウス2世の甥フランチェスコ・マリア・デラ・ロヴェーレ。聖祭壇の近くで足元に書物を置いているのはユリウス2世。
詩人ダンテ

アテネの学堂    
1510-11
ヴァティカン宮の「署名の間」にあるフレスコ。ラファエロがはじめて手がけた、大規模なフレスコ画である。このとき、ミケランジェロは、システィナ礼拝堂で天井画を描いていた。

アテネの学堂は「哲学」に対応する。
ブラマンテのサン・ピエトロ大聖堂の設計図を見て、その完成の姿を予想しながら描いたと言われている。

広々とした大聖堂の中で、アジア、ギリシャ、スコラの哲学者、科学者など50人以上が描かれていて、それぞれが論議したり、思索したりしている。
中央にいる二人は、プラトンとアリストテレスである。プラトンの哲学は抽象的、理論的であったので、天を指さしている。レオナルド・ダ・ヴィンチがモデルである。
ここでプラトンは『ティマイオス』を手に持っている。

アリストテレスは、現実的な自然哲学、経験哲学であったので、手を地上と同位置に向けている。『エティカ』を持ち、実践哲学を語る。
横顔のソクラテスが、甲冑の美青年クセノフォンなどに教えを説いている。

手前でひざまずいて筆を取っているピュタゴラスの右側で、立ち姿で片足を石に乗せているのはアナクサゴラス。
憂鬱な哲学者ヘラクレイトス。石工の衣服を着ているミケランジェロがモデルである。
紀元前3世紀の数学者ユークリットである。幾何学の定理を説明している。周りは弟子たちである。
数学者ピタゴラスである。ピタゴラスは数学と音楽の擬人像でもある。
画面右上部のニッチにはミネルヴァがいる。メドゥサの首を持っている。

ミネルヴァは平和と防禦を司り、学問の化身でもある。学問や芸術を追求する団体の守護神である。
かがんでコンパスで図を描いているのはアルキメデス。
右側には、ラファエロの自画像が描かれている。ラファエロの左は画家ソドマと考えられている。

後ろ向きで地球儀を持っているのは、2世紀の天文学者トレミーである。宇宙の中心に地球があると説いた。

その向かい側で天球儀を持つのは、おそらくペルシャの預言者ゾロアスターと考えられている。
左がわ中央で、鎧を付けているのは、マケドニアの王アレクサンダーである。アレクサンダー大王はアリストテレスの弟子であった。
その向かい側で、指をいろんな方向に広げているのが、ソクラテスである。ソクラテスは問答と分析の哲学者である。
左のニッチにいるのは、太陽神アポロである。竪琴を持っている。

アポロは理性と調和の神である。
ギリシャの哲学者エピクレスである。幸福とは精神の喜びを追求することである、と説いた。
ディオゲネスは、所有財産をすべて捨てて、樽の中で暮らした。「犬」とあだ名された哲学者である。

アレクサンダー大王の戴冠式を無視したことで有名である。

アレクサンダー大王が彼のもとを訪ね、自分にできることはないか、と哲学者に尋ねた。哲学者ディオゲネスは「太陽の光をさえぎるのを止めてくれ」を答えた。

パルナッソス             
1509-10  Fresco, 670x453cm
「詩」に対応している。

芸術の神アポロンを中心に様々な古代の文学者たちが描かれている。

中央で月桂樹の冠を付け、ヴィオラを奏でているのはアポロである。その周囲には9人のミューズたちがいる。

左側上部のグループには、盲目の詩人ホメロスを中心に描かれている。ホメロスは天を仰ぎながら、詩を吟じているようである。一番左で膝を組んで、ホメロスの詩を聞いているのは、詩人エンニゥス。横顔で描かれているのがダンテである。ダンテの向かい側にいるのは、ラテン詩人ヴェルギリウスである。

左側下部のグループは、左からアルカイオス、テーベのコリンナ、ペトラルカ、アナクレオンである。座っているのはギリシャの女流詩人サフォである。

右側では、腰を降ろしているのがラテン詩人ホラティウスである。ホラティウスの向かい側で立っているのは、サンナザーロ、その左上で口に指をあてているのは、ラテン詩人オヴィディウス。その上部のグループはには、ポッカチオ、アリオストなどがいる。
山頂の詩人たちのグループ

盲目の詩人ホメロスが天を仰いで詩を吟じている。
膝を組み熱心な様子で聞いているのが詩人エンニッス。
その二人の間に『神曲』のダンテがいる。
細部 (ダンテ)
抒情詩人たち。
左からアルカイオス、テーベのコリンナ、ペトラルカ、アナクレオン。自分の名を書いた巻物を持っているのはサフォ。
細部 (ミューズ

署名の間 天井
署名の間の天井には、神学、哲学、法律、詩の象徴像を描いた。

象徴像を注釈するものとして、寓意的な物語を描いている。新プラトン主義に基づくものである。

フィレンツェ派の造形的な伝統と、ラファエロ独特の調和のある盛期ルネサンス古典様式を確立している。

哲学   
1509-11  Fresco, diameter 180 cm
左上部と右上部の文字 "Causarum Cognitio" は「最高原因を通しての事物の認識」という哲学の定義。

「哲学」の擬人像の服装は、裾に花、中ほどに魚、上部に星の飾りがある。道徳・自然・黙想という哲学の3つの部門の暗示。

中世には、この3部門を、地(土)・水・気(空気)の3要素と同一視した。

宇宙の瞑想
1509-11 Fresco, 120 x 105 cm
「天文学」のムーサ、ウラニスの持ち物が天球儀。

1509-11 Fresco, diameter 180 cm
抒情詩、恋愛詩のムーサ、エラトはリラを持つ。白鳥を伴うことも多い。ここではエラトに羽がある。プットーが足もとにいるのも、エラトの表現。

叙事詩のムーサ、カリオペは書物を持っている。月桂樹の冠もカリオペの持ち物。

アポロンとマルシュアス

神学
1509-11 Fresco, diameter 180 cm

アダムとイヴの原罪
1509-11 Fresco, 120 x 105 cm

法律
1509-11  Fresco, diameter 180 cm

ソロモンの審判
1509-11  Fresco, 120 x 105 cm


≪ヘリオドロスの間≫
(天井)  
燃える柴・ヤコブの梯子・ノアの前に現れる神・イサクの犠牲
1513-14

(側壁)
神殿から放逐されるヘリオドロス
1511-12
旧約聖書外典『マカバイ第二書』

紀元前最後の数世紀。パレスティナはシリアのセレウコス朝の支配下にあった。

セレウコス王の司財官ヘリオドロスは、パレスティナのユダヤ人の王、ソロモンの神殿から富を掠奪する目的で、エルサレムに派遣された。

ヘリオドスと護衛たちが神殿に着くと、恐ろしい騎手が乗っている、美しい馬具を付けた馬が現れて、いきなり跳ね上がり、前足でヘリオドロスに打ちかかった。

馬の騎手の仲間2人の若者がヘリオドロスを鞭打った。

ヘリオドロスは司祭に神殿の外へ運びだされた。

ボルセーナのミサ
1512   フレスコ、底辺 約660cm  エリオドロの間
1263年、中部イタリアのボルセーナの聖堂で起った奇跡を描いている。

ボヘミア出身の若い司祭が、ミサを行っていた。すると聖体のパンから血がしたたり落ちてきた。この司祭は、教義の化体説にかねてから疑いを持っていたが、このことで、化体説の真理を確認した。

祭壇の左側が若い司祭である。聖餅を驚きながら見ている。向かい側は法王である。奇跡を見守っている。法王はユリウス二世の肖像になっている。

右側の階段には、スイスの法王擁護兵たちがいる。左側は奇跡に驚く女子供たちである。

ラファエロはこの絵で、ヴェネツィア派の豊な色彩効果を採用している。同じ年にラファエロはローマのファルネシーア荘に『ガラティア』を描いている。このとき同じ場所で仕事をしていたのが、ヴェネツィア出身のセパスティアーノ・デル・ビオンポであった。ファラエロは彼からヴェネツィア派の色彩描写を学んだものと思われている。

聖ペテロの解放
1514

アッティラと大教皇レオの会見
1514

≪ボルゴ火災の間≫
ボルゴの火災
1514-15
847年に起った火災を、法王レオ4世が祈祷によって消し止めた、という奇跡を描いている。

「ユリオドスの間」を描き終えた後、この「火災の間」に取り掛かった。「署名の間」の前室である。

1514年から17年までかかり、ラファエロは同時に、サン・ピエトロ大聖堂の造営主任になり、1515年に古代遺跡発掘の監督官にもなっている。

新法王レオ10世やその側近、枢機卿からも寵愛され、肖像を描くかたわら、「火災の間」の壁画も手がけていた。

オスティアの戦い
1516-17
新興トルコ帝国への対抗を寓している。

カール大帝の戴冠
1516-17

ガラテイアの勝利
1512-14  Fresco  295 x 225 cm   ローマ ヴィラ・ファルネジーナ

アルバのの聖母
1511  Oil on canvas,   直径 98 cm   ワシントン・ナショナル・ギャラリー
こちらの聖母子は、「カウパーの聖母子」と違って、ミケランジェロ的なヒロイズムがある。ローマにはミケランジェロが描いた、「聖家族」があった。

幼児キリストは、十字軍兵士として、勇敢な姿で描かれている。一方、聖ヨハネは、毛皮に身を包み、子供らしい姿である。

聖母は兵士用のサンダルを履いている。幼児キリストと聖母は英雄的に描かれているのである。

地面に生えている花は、アネモネ、タンポポ、スミレ、花の咲いていない三本の百合である。

キリスト教では赤色はキリストと殉教者の血を表す。磔刑の場面などにアネモネが描かれることがある。タンポポも同様に磔刑の場面で描かれることがある。キリスト教における悲しみの象徴である。スミレは謙譲の象徴で、聖母子などと共に描かれる。

聖母がじっと見つめているのは、キリストの磔刑を表す木の十字架である。

フォリーニョの聖母(聖会話)
1512  Oil on canvas (transferred from panel) 、301 x 198 cm  ヴァティカン宮美術館 ローマ

預言者イザヤ
1511-12  Fresco, 250 x 155 cm   サンタゴスティーノ聖堂 ローマ

ビント・アルトヴィティ
1515   Oil on wood   60 x 44 cm   ワシントン・ナショナル・ギャラリー
ビントが22歳のときの作品。ラファエロは33歳であった。

ビントは美しく、銀行家として成功した裕福な男であった。

顔の半分は影になって、何か秘密めいている。唇は厚く官能的で、眼差しは挑発的でもある。手を胸に置いているのは、指輪を見せるためかもしれない。

背景には何もなく、緑で塗り、非現実性を高めている。

いかに成功していようが、美しかろうが、彼はある脅威にさらされた1人の人間である。具体的な個人であるにもかかわらず、「若者の肖像」として普遍化され、永遠の若さを与えられているのである。

魚の聖母(聖会話)
1512-14  Oil on canvas transferred from wood, 215 x 158 cm  プラド美術館 マドリード

サン・シストの聖母 (聖会話)
1512-14  Oil on canvas 、265 x 196 cm   ドレスデン国立絵画館
1514年頃、イタリアのピアツェンツァにあるサン・シスト教会からドレスデンに移された。

左にいるのは聖シクトゥス、右は聖バルバラ。

ラファエロ末期の作品。整った遠近法と様式のくずしを合わせて、親近感あふれる作品になっている。

光の中から聖母子が現れるという神秘的な幻想と人間の理想の融合ともいうべき作品。

布張り窓の聖母
1513-14  Oil on wood, 158 x 125 cm  ピッティ美術館  フィレンツェ

聖カエキリア(聖会話)
1514  Oil transferred from panel to canvas, 220 x 136 cm  ボローニャ国立美術館

小椅子の聖母
1514  Oil on panel, 71 cm  ピッティ美術館  フィレンツェ
「サンシストのマドンナ」とともに、最も知られている聖母子像。

時代的にはラファエロがローマのヴァチカン宮殿の「エリオドの間」を描いた頃の作品。

この頃のラファエロはヴェネツィア派の色彩に関心を寄せていたので、色彩が幾分派手。

ローマで見つけた酒樽の蓋に描いたと伝えられる。
ラファエロ31歳〜33歳頃の作品。

幕の聖母
1514  Oil on wood, 65,8 x 51,2 cm  アルテ・ピナコテーク  ミュンヘン ドイツ

バルダッサッレ・カスティリオーネ
1514-15  Oil on canvas, 82 x 67 cm  ルーヴル美術館  パリ

奇跡の漁 (タピスリーのための下絵)  
1515 Tempera on paper, mounted on canvas, 360 x 400 cm  ヴィクトリア・アンド・アルバート美術館 ロンドン
主題解説:聖書の物語 「奇跡の漁」へ行く


「預言者は故郷では歓迎されないもの」と言って、故郷のナザレで受け入れられなかったイエスは、ガラリヤで伝道を始めた。

ゲネサルト湖畔で、二人の漁師が船から上がって、網を洗っていた。その一人のペテロに向かって、イエスは「沖に漕ぎ出して網を降ろし、漁をしなさい」と言った。

ペテロは言った。「わたしたちは夜通し漁をしていたが、何もとれなかったのです。しかし、お言葉ですから、網を降ろしてみましょう」。すると、網が破れるほど、おびただしい魚がかかった。

ペトロはイエスの足もとにひれ伏して、「主よ、わたしから離れてください。わたしは罪深いものなのです。」と言った。

イエスは言った。「今から、あなたは人間をとる漁師になる」と。ペトロの弟アンデレ、ゼペダイの子のヤコブとヨハネの猟師たちもイエスに従った。


聖ペテロへの天国の鍵の授与  (タピスリーのための下絵)  
1515
Tempera on paper, mounted on canvas, 345 x 535 cm  ヴィクトリア・アンド・アルバート美術館 ロンドン

聖パウロの説教  (タピスリーのための下絵)
1515
Tempera on paper, mounted on canvas, 390 x 440 cm  ヴィクトリア・アンド・アルバート美術館 ロンドン

足なえの治療  (タピスリーのための下絵)
1515-16
Tempera on paper, mounted on canvas, 340 x 540 cm   ヴィクトリア・アンド・アルバート美術館 ロンドン

アナニアの死
1515
Tempera on paper, mounted on canvas, 385 x 440 cm  ヴィクトリア・アンド・アルバート美術館 ロンドン

ヴェールをかぶった婦人の肖像
1516  Oil on canvas, 82 x 60,5 cm  ピッティ美術館  フィレンツェ  イタリア

堕天使を駆逐する聖ミカエル
1518  Oil transferred from wood to canvas, 268 x 160 cm  ルーヴル美術館  パリ

エゼキエルの幻視           
1518  Oil on wood, 40 x 30 cm  ウフィツィ
主題解説:聖書の物語「預言者エゼキエル」へ行く


ダニエル、イザヤ、エレミアとともに四大預言者の一人。紀元前598−597年のエルサレム包囲後、捕囚となり、バビロンに連れて行かれる。

五年目にエゼキエルは預言者となる。エゼキエルは神が光を放つ不思議な生き物に引かれた四輪の馬車に乗って神が現れた。神は反抗的なユダヤ人がいることを嘆いた。

この四つの生き物は、新約聖書に、書記たちを象徴する動物として登場する。鷲、人間、牛、獅子である。

エゼキエルは二十二年以上の間預言を続けた。初めは誰も信じなかった。しかし、エルサレム陥落を預言してからは人々は預言者エゼキエルを信じるようになった。

エゼキエルは人々に捕囚をとかれ、復興の印として寺院を建立することを預言し、人々に希望を与えた。

レオ10世と2人の枢機卿 (ジュリオ・デ・メディチとルイジ・デ・ロッシ)
1518-19 Oil on wood, 154 x 119 cm  ウフィツィ美術館  フィレンツェ イタリア
枢機卿の一人ジュリオ・デ・メディチは後に教皇クレメンス7世となる

キリストの変容
1518-20  Oil on wood, 405 x 278 cm  ヴァティカン宮美術館

奇跡の漁   主題解説:聖書の物語へ行く
1519 タピスリー  490 cm, 441 cm  ヴァチカン美術館

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