ブリューゲル
Pieter Brueghel the Elder (1525-1569)
フランドル  北方ルネサンス

農民の婚宴 Peasant Wedding  、1568
Oil on wood

ウィーン美術史美術館 
Kunsthistorisches Museum , Vienna , Austria
ブリューゲルの「農民画家」という異名は、農民を多く描いた点にある。それらの作品は風刺的だと言う人もいれば、哀れみ、愛情深いとする人もいる。

『農民の婚礼』で、粗野でまのぬけた客たちが取り囲んでいるのは、丸々として愚かそうな顔の花嫁である。紙で作った王冠の天蓋の下で酒を飲んで赤い顔をしている。

痛ましい姿である。貧しい家庭に育った娘。彼女の長い人生の内の、たった数時間の栄光である。

客たちは粗末な小屋で、粗末な食器でふるまわれるポリッジ(かゆ)か、カスタードをがつがつ食べている。貧しい者たち、しいたげられた者たちの哀れな祝杯。

子供が、空になった皿を、おいしそうになめつくしている。

楽器の演奏者たちは、食事を受け取るまで演奏しなくてはならない。本当にお腹が空いているのである。じっと運ばれてくる食べ物を見つめている。

無神経にこの絵を眺めていると、農民のこっけいな姿の絵にしか見えない。まるで道徳のテストのようでもある。しかし、見落としてはいけない

単に堕落した労働者階級をユーモアを持って描いたのではない。ブリューゲルの深さを理解しなくては、我々自身がダメになってしまうような、厳しい絵なのである。

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